日本皮膚科学会雑誌
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乾癬表皮におけるコレステロールエステル化酵素活性について
藤田 優麻生 和雄R.K. Freinkel
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1971 年 81 巻 6 号 p. 473-

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抄録

Kooymanは角層に移行するにしたがい,エステル量が増加し,遊離コレステロールが減少すると報告し,SwanbeckはX線回析で正常のヒト角層では250Åの蛋白線維が80Åの脂質膜によつてかこまれているが,異常角化ではこの脂質膜に変化がおこることを報告し,さらにコレステロール生合成阻害剤MER-29(Triparanol)が人で異常な角質形成,すなわち,魚鱗癬様皮膚炎,脱毛を生ずると報告された.これらのことからRothmanはコレステロールおよびそのエステル化が角質形成と重要な関係を有するとのべている.さらにGara,Rothman,Lorinczは正常人と乾癬患者の背中に14C-パルミチン酸エーテル溶液を塗布し,2.5時間後に綿球でふきとり,14C-パルミチン酸コレステロールエステルを抽出,測定し,正常人では平均4.9%回収しえたが,乾癬患者では平均0.2%しか回収しえなかつた.この結果からLorinczは異常角化は充分なコレステロールエステルが存在しないためにおこるもので,乾癬においてはこのコレステロールエステル化の不足は優性遺伝によるらしいとのべている.しかしながら,皮表のリピドフィルムのエステル化のみから表皮の角化について議論をすすめてよいか疑問である.麻生らは表皮でコレステロールが酵素的にエステル化されることをあきらかにし,表皮可溶性画分やミトコンドリアでの本酵素の局在,補酵素の要求性,またp-chloromercuribenzoic acidによる阻害ならびにglutathioneによる回復などの成績から,CoA,ATPの働きで長鎖(主としてオレイン酸)のfatty acyl-CoAが生成され,これがtransferaseの作用でコレステロールのエステル化に働くことを報告した.さらに表皮において,コレステロールエステルを加水分解し,コレステロールを遊離する酵素の存在を報告した.本酵素は表皮可溶性画分にあり,コリンエステラーゼ,non-specific esteraseと異なつたspecificな酵素で,補酵素としてATP,CoAを必要としなかつた.以上のような知見のうえにたつて,乾癬表皮のコレステロールエステル化をあらためて検討し,その成績の概要を報告する.

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