著者らは表皮での最も脂質の主要な合成系は表皮細胞可溶性画分にあり,ここでアセチールCoAからパルミチン酸C16:0の合成のおこなわれていることをたしかめた.この反応は図1のごとく二つの段階でおこなわれている.第1段階はアセチールCoAが炭酸を固定してマロニールCoAとなるもので,これはアセチールCoAカルボキシラーゼによつておこなわれる.第2の反応はLynenのmultienzymeによるもので,マロニールCoAの7分子がパルミチン酸に生成され,このとき14分子のNADPHを必要とする(以下第2の反応をmalonyl CoA pathwayという).アセチールCoAとマロニールCoAの縮合によってアセトアセチールCoAが生ずるが,このアセトアセチールCoAのCO基がNADPHのH+により影響をうけると図1のように脂肪酸生成へ(malonyl CoA pathway),アセチールCoAの-SH基によつて攻撃されるときは,生成はコレステロール合成に傾くと考えられている.放射性基質をもちいた乾癬表皮の脂質生合成についてはすでにHerdenstamおよび大城戸らの報告があるが,著者らは以上の知見の上にたつて,乾癬表皮の脂質生合成を,とくに1)アセチールCoAカルボキシラーゼや2)Lynenの脂肪酸合成multienzymeから再検討したいと考えた.成績の概要を報告したい.