近時皮膚のムコ多糖類に対する関心が強まつているが,皮膚科領域での尿中ムコ多糖類に関する研究は極く少数しかない.本論文では,原理的に組織化学に応用し得る方法,すなわち四価アンモニウム塩と結合させた酸性ムコ多糖類(AMPS)を,各種濃度の食塩水で分画抽出する方法を用い,尿中酸性ムコ多糖類を測定した.実際には検体尿50~100mlを約1/10に濃縮し,これに1%セチルトリメチルアンモニウムクロライド入りフォルマリン・アルコール液を4倍量加えてAMPSを沈殿させ,遠沈した沈渣に1規定食塩水を10mlを加えてAMPSを抽出し,その沈渣からさらに今度は2規定の食塩水で抽出を行なう.このそれぞれの抽出液に4倍量のアルコールを加えて,その遠心沈渣を1.5mlの蒸溜水に溶かす.こうして得たAMPS分画抽出液は,セルローズアセテート膜を使い,pH8.6ベロナール緩衝液若しくはpH2.8塩化リチウム液での電気泳動を行ない,pH2.5アルシアンブルー液で染色,検定するとともに,さらにコンドロイチン硫酸分画(後述)についてはデンシトメーターにかけて半定量的測定を行なつた.