日本皮膚科学会雑誌
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皮膚疾患と糖尿病 Ⅱ糖尿病患者の爪床毛細血管像
水野 勝
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1974 年 84 巻 11 号 p. 523-

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抄録

50例の正常人,107例の糖尿病患者について爪床毛細血管撮影をおこない,つぎの結論をえた.1 糖尿病群では正常群にくらべ,係蹄の吻合,屈曲,捩れ,顆粒状血行,乳頭下血管網(見える),拡張延長など異常を呈する率が高かった.2 糖尿病性毛網症を有するものは,それを有していないものにくらべ爪床毛細血管異常を呈する率が高く,異常も高度であった.3 糖尿病患者で高コレステロール血症を有するものと,それを有していないものとでは爪床毛細血管異常に明らかな差位はみられなかった.4 皮膚合併症と爪床毛細血管との関連では,疾患別にはとくに明らかな関連は見られなかった.しかし,皮膚科学的に正常であった糖尿病患者では高度な爪床毛細血管異常がみられなかった.5 糖尿病性細小血管症の病態把握において,網膜症や腎症の検査と同様に,爪床部毛細血管観察撮影が有用であることを認めた.糖尿病にしばしばみられる血管病変はその糖代謝障害にもとづく結果ではなく,むしろその疾患の重要な一部をなすものと考えられている.その血管病変は大別して動脈硬化性血管障害と,糖尿病性細小血管症とにわけられるが,前者は全身性のもので,非糖尿病群に比して糖尿病群では発生頻度が高く,変化も高度である.しかし,加令現象としての動脈硬化性病変と形態学的に区別することはできない.後者は糖尿病で特有なもので,これまではおもに糖尿病性網膜症,腎症についての研究が多い.著者は糖尿病患者の爪床毛細血管像を観察し,その糖尿病性網膜症,血清脂質(コレステロール),皮膚合併症との関連についての検討をおこなった. 

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© 1974 日本皮膚科学会
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