日本皮膚科学会雑誌
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尋常性乾癬における組織適合抗原
小澤 明
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1976 年 86 巻 3 号 p. 205-

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抄録

尋常性乾癬の遺伝説に疑問をもち,そのため,新しい免疫遺伝学的検索法の1つである組織適合検査を本症で検討した.すなわちヒト白血球抗原(HLA抗原)のタイプを,尋常性乾癬54例,対照として健康正常人66例,および他疾患対照群として掌蹠膿疱症31例,脂漏性皮膚炎17例について調べ,次の結果を得た. 1.尋常性乾癬の統計遺伝学的解析において, HLAA1およびHLA-BW 37が高頻度に出現(前者は,正常人1.51%,患者16.67%,後者は,正常人4.54%,心者20,37%)し,しかもこの HLA-A1 と HLA-BW 37 との連鎖不平衡(Δ = 0.0764)も成立した.また家族調査で,この2つの抗原の haplotype を確認した. 2.これらは,諸外国で報告されているタイプ, HLAB13, HLA-BW 17 と一致しない.そこで,今日欧米でいわれている木症の疾患感受性抗原または遺伝子が,そのまま日本人に適応して, HLA Locus B の HLA・B 13 か HLA-BW 17,または両方にあると結論することは早計である.ただし, Sveigaard らによれぽ),今回著者が日本人の本症で発見した HLA-BW 37 が,やはり増加するらしいと研究段階中の一部発表もある.将来,諸外国においても,この検査シリーズに HLA-BW 37 抗原を含有すれば,著者と同じ結果が得られることになるかもしれない. 3.本邦で遺伝が証明される家系は少ないにもかかわらず,今回の HLA 抗原の調査により,日本人の尋常性乾癖でも遺伝の可能性は否定できなくなった. 4.掌蹠膿疱症は, HLA 抗原のタイプで健康正常人のそれと有意の差はなかった.また,脂漏性皮膚炎は,HLA-AW 30・31, HLA-B 12 が高頻度に出現した.これは,尋常性乾癬と対比するため行ったか,それ以外にも両疾患が遺伝するとしても,尋常性乾癬のそれとは抗原が異なり,そのため免疫遺伝学的には全く異なる疾患群であると結論できた. 5,尋常性乾癬における HLA 抗原の意義につして,往々考按した.

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© 1976 日本皮膚科学会
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