日本皮膚科学会雑誌
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実験的ポルフィリン症マウスの光線過敏 -グリセオフルビン投与時におけるポルフィリンの動態と実験的ポルフィリン症マウスに対する光照射時における皮膚変化-
野中 薫雄下山 時夫本多 哲三広渡 徳治堀 真野北 通夫
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1977 年 87 巻 10 号 p. 585-

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抄録

リセオフルビン投与により実験的ポリフィリン症を生じ,かつ,これらの動物を用いて光線過敏を起こし,その標的細胞として内皮細胞が主体をなすことが Gschnait らにより報告されている.著者らは,このことを確かめるために,次の実験をおこなった.グリセオフルビン1% 含有飼料にて D-D 系マウスを飼育すると,対照群では体重 31.0g, 肝臓重量 1.8g .肝臓/体重比 5.93%, 肝コプロポルフィリン 0.11μg/g. 肝プロトポルフィリン0.38μg/g, 血中プロトポルフィリソ19.58μg/dl であるのに対し,グリセオフルビン投与群では,投与期間38日で,体重 28.9g, 肝重量 4.4g 肝臓/体重比 14.83%, 肝ウロポルフィリン 0.83μg/g. 肝コプロポルフィリン 4.60μg/g, 肝プロトポルフィリン 250.09μg/g,血中コプロポルフィリン 22.65μg/dl. 血中プロトポルフィリン 706.68μg/dl,であった.皮膚ポルフィリンは対照群でコプロポルフィリン 0.50μg/100g, プロトポルフィリン 1.42μg/100g であるのに対して,グリセオフルビン18日投与群ではコブロポルフィリン 6.69μg/100g. プロトポルフィリン 26.88μg/100gと増加していた.これらのグリセオフルビン投与マウスに日光照射すると,臨床的には紅斑,痴皮,壊死を生じ,病理組織学的的には,光顕では小血管拡張,充血,細胞浸潤などの真皮反応が強く,電顕的には内皮細胞の破壊,変性が著明であった.また,血管周囲細胞の障害も著明で,また小血管周囲のマスト細胞の数も増加し,マスト細胞の破壊,脱穎粒現象もみられ,内皮細胞のみならず,血管を中心とする細胞群に障害を及ぼすものと思われた.これらのことより,グリセオフルビン投与マウスにおける光線過敏性反応は Gschnait らが述べるごとく,内皮細胞の選択的破壊によるものと思われるが,多量の光線により,更に小血管を中心とする細胞群,ことにマスト細胞にも直接の攻撃がうかがわれ,これらのマスト細胞の態度について,さらに検討を加える必要があると思われた

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© 1977 日本皮膚科学会
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