日本皮膚科学会雑誌
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ilomatrixomaに関する研究 -特に好塩基性細胞の微細構造について-
山崎 律子
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1977 年 87 巻 9 号 p. 537-

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抄録

Pilomatrixomaは,いわゆる Calcifying epitheliomaof Malherbe とも呼ばれ,広く知られている上皮性良性腫瘍である.本腫瘍の発生母地を解明する目的で,病理組織学的に興味ある構築を示す2症例,すなわち,腫瘍塊の一部が毛嚢と連続し,好塩基性細胞が輪状構造を呈する1例,および,好塩基性細胞の輪状配列が多数認められる1例について電顕的観察を行ない,以下のような結果を得た.1,本腫瘍細胞の prototype とみなされる好塩基性細胞には,3型あることが観察された. 第1型 最も未熟な好塩基性細胞.これらは電顕的に認められる基底膜に胞体の一端をつけ柵状配列をなし,正常毛球部下端の種子層の細胞に類似の形態を呈していた. 第2型 trichohyaline, tonofilament が認められない未熟な好塩基性細胞.これらは正常の毛球の細胞分裂部あるいは未分化部の細胞に類似していた.しかし異常所見として, vacuole が散見された.第3型 大部分の好塩基性細胞.これらは胞体内に,凝集した tonofilament が種々の程度に出現し,毛皮質の角化過程に類似の形態を示した. 2.移行型細胞内に光顕的に認められた角球は,毛皮質や内毛根鞘の各層にわたる毛嚢様構造を不完全ながら示していた. 本症の発生起原について,従来,諸家はhair matrixcdに分化能力を有する primary epithelialgerm cell としているが,著者は上記の観察から,不完全ながら毛嚢への形態分化能力を保持し,かつ幾分かの異常性を有する hair matrix cell 類似の細胞が,本症の発生母地と考えられる所見を得た.

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© 1977 日本皮膚科学会
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