日本皮膚科学会雑誌
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妊娠性疱疹の免疫学的検討
林 懋渡辺 千絵子松岡 公代
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1978 年 88 巻 5 号 p. 335-

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抄録

妊娠9ヵ月で発症した24歳,初産婦にみられた妊娠性疱疹の1例を報告した.臍囲にはじまり,躯幹,四肢に多形紅斑様紅斑,水庖か発生し,これに対してステロイドの内服が奏効した.しかし皮疹は分娩後再燃し,全身に拡大,著明な水疱形成がみられた,その後皮疹は徐々に軽減,再開した月経毎に再燃を繰り返したが,全経過約11ヵ月で治癒した. 病変部皮膚の基底膜に補体 (Clq, C3, C9) の著明な沈着,軽度ではあるが免疫グロブリン (lgG )の沈着をみとめた.蛍光抗体間接法では血中抗基底膜抗体としてはみとめられないが,蛍光抗休補体法でいわゆる HG 因子が証明され,吸収試験の結果,本因子は lgG であることが確められた.更に HG 因子は再発を繰り返した約6ヵ月にねたって証明され,しかも臨床経過とほぼ平行してその抗体価が推移してみられたことから,本因子 (lgG) による Classical pathway を介しての補体の活性化が妊娠性疱疹の発症病理に重要な役割を果すことが推定された. シナホリンによる貼布試験,皮内反応(24時間判定)が共に陽性を示し,6ヵ月後の再検にて陰転化したことから,遅延型免疫反応が暗示され,上記蛍光抗体法の所見と考えあわせ,ゴナトトロピンに関連した自己免疫疾患である可能性が示唆された.しかし胎盤に対する血中抗体の検索では妊娠性疱疹に特異的所見は見出されず,確証は得られなかった.また妊娠36週における血中プロゲステロン定量で異常低値を示したが,本症におけるその意義については不明であった.  

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