日本皮膚科学会雑誌
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口唇粘膜にみられる微細血管の肉眼的および生態顕微鏡研究 -糖尿病,慢性肝炎,肝硬変患者について-
菊川 洋祐
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1979 年 89 巻 12 号 p. 805-

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抄録

糖尿病,慢性肝炎,肝硬変患者の口唇粘膜にみられる血管所見を肉眼的および生態顕微鏡的に観察し,つぎの成績をえた. 1.糖尿病の場合,顕微鏡的には多彩な血管像を呈する傾向がみられ,とくに微細毛細血管,係蹄頂延長,拡張の頻度が高かった.肉眼的には約半数に血管拡張所見が認められ,拡張の程度は女性よりも男性に強く,年齢的には40歳以上,とくに50歳代に最も強く認められた.罹病期間および高コレステロール血症と拡張所見との関係はみられなかった.糖尿病性網膜症を有するものは有しないものに較べ拡張所見を有するものが明らかに高率にみられたが,特異的な拡張型はみられなかった.空腹時血糖値が 200mg/dl 以下の軽度糖尿病にむしろ拡張所見を有するものが多く,またその程度も強かった. 2.慢性肝炎と肝硬変の場合,ともに毛細血管係蹄の高さが延長し,ほとんどの症例に拡張がみられ,しかも高度な拡張係障が目立った.また,毛細血管のみならず乳頭下静脈叢の拡張も高頻度に認められた.しかし,その他の形態異常は慢性肝炎に分岐または吻合がかなり高頻度にみられたほかは少なかった.肉眼的にも慢性肝炎,肝硬変ともにほとんどの症例が拡張所見を有し,とくに肝硬変では多数の斑状血管拡張や,ロ唇全体の著しい血管拡張を呈するものが特異的に多くみられた.また,慢性肝炎,肝硬変ともに男性の方に拡張の程度が強く,年齢的には40歳代と50歳代にもっとも拡張所見が強くみられれる傾向があった.しかし,罹病期間との関係はみられなかった.慢性肝炎にはクモ状血管腫や紙幣状皮膚は少ないためか,それらとの関係は認められなかったが,肝硬変ではそれらを有するものの方に著しい拡張所見を有するものが多かった.しかし慢性肝炎,肝硬変ともに手掌紅斑の有無との関係はみられなかった.

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© 1979 日本皮膚科学会
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