1979 年 89 巻 12 号 p. 853-
Hailey-Hailey 病 (HHD) 病変部表皮に見られる acantholysis の本態を,動的面から検索する目的で,その部の表皮の体外培養を試み,同時に培養した尋常性天疱瘡 (PV) のそれとを比較しながら,経時的に観察した. HHD の培養表皮細胞は,PV 患者のそれと異り,培養早期から表面凹凸の目立つ薄板状の遊出や,個々の細胞が離ればなれとなる孤立性遊出,或いは細胞質が細長く伸張した直線型の遊出等,細胞間の解離乃至その結合の不全を示唆する遊出形態を示した.この所見は表皮内に見られる “acantholysis” の組織培養レベルでの一表現であり,同時に表皮細胞自身の組織化力の低下を意味するものと考えた.このことから, HHD 患者表皮細胞には,PV 患者のそれと異り,遺伝的に規定された,結合の欠陥を含めた或る種の膜機能の不全があるものと推論した.