日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
表皮細胞の分化に伴う核非ヒストン蛋白の変動
桜井 学
著者情報
ジャーナル 認証あり

1979 年 89 巻 14 号 p. 1041-

詳細
抄録

1)健常人身体19部位の皮膚,ならびに尋常性乾癬,滴状類乾癬,慢性湿疹,表皮母斑,汗孔角化症,鱗状毛包性角化症,進行性紅斑性角皮症,尋常性疣贅,脂漏性角化症の9種の皮膚疾患患者の無疹部および皮疹部皮膚についてMlUon反応ならびにacid fastgreen 染色を施し,表皮基底層,有棘層,ならびに顆粒層の細胞核の非ヒストソ蛋白を細胞化学的に測定した,これにより,表皮の分化に伴り表皮細胞核非ヒストン蛋白の変動と,分化に際し,優位に関与する非ヒストソ蛋白の分子種 (優位蛋白)の推定を試みた. 2)健常人身体19部位の表皮については,非ヒストン蛋白は分化と共に漸減する.腹部では中性非ヒストソ蛋白が,前腕屈側と下腿伸側では酸性非ヒストソ蛋白が優位であったが,他の16部位では特に優位の蛋白は認められなかった. 3)鱗状毛包性角化症では無疹部において,すでに酸性蛋白が優位を示し,かつその変動が異常を示していた. 4)尋常性乾癬の皮疹部では酸性蛋白の変動は正常,中性蛋白の変動は異常であった.いずれの蛋白か優位であるかは決定できなかった・ 5)進行性紅斑性角皮症の皮疹部では,酸性蛋白の変動パターンに異常があったが,優位蛋白分子種の決定はできなかった. 6)慢性湿疹皮疹部と汗孔角化症の皮疹中央部では,非ヒストン蛋白の変動は正常であったが,優位蛋白は酸性蛋白であった. 7)非ヒストン蛋白の変動パターン,ならびに優位蛋自分子種に関して著しい異常を示さなかった残りの4疾患中,滴状類乾癬と脂漏性角化症では,皮疹部と無疹部の間で基底細胞核非ヒストン蛋白含量に差が認められた.残りの表皮母斑と尋常性疣贅では,非ヒストン蛋白含量に関しても異常を認めず,これらの疾患の病態発生には非ヒストン蛋白の異常は関与しないものと考えられた,

著者関連情報
© 1979 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top