日本皮膚科学会雑誌
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実験的腫瘍発生に及ぼすアレルギー性接触過敏反応の影響
竹内 隆司
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1980 年 90 巻 14 号 p. 1343-

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抄録

2-stage carcinogenesis による実験的腫瘍発生に及ぼすアレルギー性接触過敏の影響について,A/J マウスおよび DNCB を用いて研究し,以下の結果を得た. 1. Kawamuraら1)の示したごとく 1 % DNCB 溶液にて連続5日間塗布感作し,21日後に 0.1% DNCB 溶液にて反応惹起を加えた群は反応惹起部位の基底細胞分裂数の増加が認められ,これは未感作群に比較して有意(P<0.01)の差を示した.これをアレルギー性接触過敏反応の指標とした.今回著者は Cyclophosphamide(以下CYと略記)を DNCB 感作一反応惹起に先だつ前処置として注射すると,CY 未処置群に比較して有意(P<0.01)の差をもって反応惹起部位の基底細胞分裂数が増加することを認めた.これをアレルギー性接触過敏反応の増強と解釈した. 2. DNCB感作一反応惹起をInitiation, Promotionに先だつ前処置とする群では,単に0.1%DNCBを前処置とする群に比較して有意(0.02<p<0.05)の発生腫瘍数増加を認め,さらに Initiation Promotion 処置のみの群と比較して発生腫瘍数の増加傾向を認めた.このことより Initiation の前処置としての DNCB 感作-反応惹起は Initiation を修飾し,腫瘍発生傾向を増大させる因子と成り得ると考えられる. 3. CY 処置につづく DNCB 感作一反応惹起を Initiation Promotion の前処置として加えた群と DNCB 感作一反応惹起のみを前処置として加えた群との比較では,発生腫瘍数に有意差は認められなかった.このことより腫瘍発生に関しては,単に Initiation を加えた時点の分裂細胞数のみが関連するばかりではなく,細胞性免疫そのものが関連するものであると考えられ,この際に一定レベルの細胞性過敏が成立していれば,それをさらに増強しても腫瘍発生は増大しないといり成績が得られた.

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© 1980 日本皮膚科学会
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