日本皮膚科学会雑誌
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正常および病的皮膚線維間基質のムコ多糖微細構造の検討
前田 秀文
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1980 年 90 巻 5 号 p. 411-

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抄録

さきに石川らが皮膚ムコ多糖(GAG)の組織化学的証明のために開発した FAC 液で前固定した標本についてルテ二ウムレッド(RR)染色を行ない,真皮線維間基質の GAG 構造を再検討するとともに,さらに一部の試料につき酵素消化による GAG の同定を試みた.1.正常皮膚では,線維間基質の RR 陽性物質は径30~70Åのフィラメントを中心に,それにさらに微細なフィラメントが170~400Å間隔で側鎖状に多数附着する,いわゆるシダ状構造を示した.この構造は,形態学的に軟骨で証明された proteoglycati aggregates(Rosenberg) に類似し,酵素消化で proteoglycan aggregates と同じヒアルロン酸が中心となり GAG・蛋白複合体が附着していることを確認した.さらに,膠原細線維周囲でも絨毛状フィラメント構造の RR 陽性物質が見られ,一部にデルマタン硫酸を含み,形態学的に線維間基質の GAG の側鎖フィラメントと密接な関連性を有しているものと思われる.2.皮膚硬化症(汎発性鞏皮症,汎発性モルフェア,成人性浮腫性硬化症)では,本質的に正常皮膚と類似の GAG 構造を認めた.3.それに対し,丘疹状ムチノーシスでは明確な側鎖部分を欠くフィラメント(ヒアルロン酸)の網状分布像か見られた.また全身性ヒアリノーシスでは,径460Åの粒子か950Åの間隔で附着した径50Åのフィラメント(ヒアルロン酸と思われる)の密な網状構造が見られ,さらにまた,いわゆる crossbanded structure との間に移行像が観察された.酵素消化の結果と合わせ,丘疹状ムチノーシスでは proteoglycan aggregatesの構造異常か,全身性ヒアリノーシスでは proteoglycan aggregates あるいは糖蛋白の構造異常が示唆され,全身性ヒアジノーシスに見られる cross-bandedstructure は proteoglycan aggregates あるいは糖蛋白の沈着物と推定される.

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