日本皮膚科学会雑誌
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扁平苔癬型薬疹について
渡辺 千絵子
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1981 年 91 巻 10 号 p. 1051-

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抄録

扁平苔癬型薬疹14例について,臨床症状,病理組織学的所見に加えて,免疫組織学,貼布試験,誘発試験について検索し報告した. 原因薬は,シンナリジンと塩酸ピリチオキシンによるものが多い.皮疹は一般に,広汎かつ左右対称性に生じ,治癒した後に,著明な色素沈着を残しやすい.肝機能障害は通常みられない.組織像は,ほぼ定型的な扁平苔癬の所見に一致するが,真皮の帯状細胞浸潤は必ずしも顕著でない場合もあり,好酸球の浸潤か認められる症例もある.免疫組織学的所見では,恒常的に基底膜部にフィプリンの沈着が,一部の症例でコロイド小体に IgM, IgA, IgG, C3 の沈着がみられ,この所見は,特発性の扁平苔癬と対比し,特記すべき差違はない.通常,貼布試験は陰性である.誘発試験では,皮疹を誘発させるには,常用量で1週間前後の投与が必要で,また,誘発された個々の皮疹は,原因薬を継続しても,自然に消退する現象がみられた.シンナリジンおよび大部分の苔癬型薬疹は,非アレルギー機序による発症が有力と考えられた.苔癬型薬疹における所見をもとに,扁平苔癬の発症機序についても考察を加えた.

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© 1981 日本皮膚科学会
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