日本皮膚科学会雑誌
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爪カンジダ症
渡辺 晋一関 利仁下妻 道郎鄭 憲滝沢 清宏
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1983 年 93 巻 1 号 p. 19-

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抄録

カンジダ性爪炎はしばしば爪囲炎を伴い,カンジダの真の寄生によって生ずる爪病変ばかりでなく,カンジダ性爪囲炎によって生ずる二次的な爪の変化をもカンジダ性爪炎として取扱われている嫌いがある.この原発性のカンジダの寄生によって生ずるカンジダ性爪爪炎(爪カンジダ症)とカンジダ性爪囲炎によって生ずる二次的爪変化とは,発生病理学的に全く異なる疾患でありながら,カンジダ性爪炎と一括されてきたのは,両者の臨床・病理的特徴が明確でなかったためだと思われる,そこで我々は昭和44年から55年の間に東大・皮膚科を受診・したカンジダ症患者765名の統計的観察を行い,その中から25名の爪カンジダ症をみいだし,これらの臨床・病理的検討を行った.この結果,本症はカンジダ性爪囲爪炎の14.3%にみられ,年齢・性別では通常のカンジダ性爪炎と有意な差はみられなかったが,臨床的に,本症は爪甲下角質増殖を特徴とし,病理組織学的に菌要素は爪甲深部にみられ,しかも白癖菌類似の異常寄生形態をとることかわかった.そしてこの原因菌はすべて Candida albicans であり,種々の治療に抵抗し,唯一有効な治療法はケトコナゾール内服であった.また本症は SLE など細胞性免疫不全をぎたす基礎疾患を伴うことが多く,慢性皮膚粘膜カンジダ症が,先天的なカンジダに対する細胞性免疫不全を背景に発症する病気であるのに対し,爪カンジダ症は後天的に生じたカンジダに対する免疫不全を背景に発症した疾患であると思われた.つまり,本症を host 側の発症要因によって発症したカンジダ症と考えることができ,この意味で本症を一つの dermadrome とみなすことができると思われた.

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© 1983 日本皮膚科学会
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