日本皮膚科学会雑誌
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上皮性皮膚腫瘍組織におけるT細胞浸潤のacidα-naphtylacetate esterase(ANAE)染色による観察
篠田 英和
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1983 年 93 巻 11 号 p. 1195-

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抄録

皮膚上皮性腫瘍組織に acid α-naphtyl acetateesterase (ANAE) 染色を行い,①上皮性皮膚腫瘍組織に T リンパ球の浸潤がみられるか否か, ②もしみられるとすれば,腫瘍の種類,悪性度などとの間に一定の関連,浸潤パターンなどの相違があるか否か,などの検討を行い次の結果を得た. 1)脂漏性角化症では,腫瘍巣周囲に散在性にわずかな T リンパ球浸潤を認めたにすぎず,検討症例群で最も軽度の T リンパ球浸潤であった. 2)有棘細胞癌では,腫瘍巣に浸潤するリンパ球の約 80% は T リンパ球で,腫瘍に直接接する部分が多く認められたが,一部では,マクロファージの浸潤層外側に浸潤する部位もみられた.また巣内に侵入する T リンパ球も少数認められた. 3)基底細胞上皮腫では,T リンパ球の浸潤は,有棘細胞癌,ケラトアカントーマに比して軽度であるが,浸潤リンパ球の 80% 以上を占めていた.本腫瘍における特徴的所見は,腫瘍巣との間に T cell free の zone が存在し,組織型によって浸潤の強さが異っていることであった.すなわち, solid 型で最も著しく, morphea-like 型で最も軽い浸潤であった. 4)ボーエソ病では,T リンパ球の浸潤は基底細胞上皮腫の solid 型とほぽ同様の強さであり,腫瘍巣に密着する部分,T cell free の zone を呈する部分などがみられた. 1)~4)の所見から,生体は悪性腫瘍に対して,その大小を問わず T リソパ球を動員してその排除に努めていることがわかった. 5)ケラトアカソトーマでは,T リンパ球の浸潤は検討症例群で最も強く,腫瘍巣に密着し,巣内に多数侵入する像が観察された.

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© 1983 日本皮膚科学会
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