日本皮膚科学会雑誌
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いわゆる“蚊アレルギー”の1例 -Histiocytic Medullary Reticulosis様の像を呈した細胞性免疫能低下症例の臨床と病理-
赤井 昭
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1983 年 93 巻 7 号 p. 711-

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抄録

6歳頃いわゆる“蚊アレルギー""の状態で発症し,毎年蚊刺アタックを繰返すうち,14年後,蚊刺アタックを契機に histiocytic medullary reticulosis に酷似した病態を併発し,3ヵ月の経過で,呼吸不全と出血性素因のため死亡した症例を報告した.本症例では発病当初から Tリンパ球の機能不全に基づく細胞性免疫不全が存在し,蚊アレルギー以外にも数種のワクチン類に対して異常反応がみられた.また発症当初から全経過を通じて顔面,頚部に浸潤性の紅色丘疹が出没し,末梢血の白血球減少,リンパ球増多 (subpopulation では T 細胞増多,B 細胞減少),GOT, GPT, LDH, BIL 値の上昇傾向がみられた.蚊刺アタックは高熱を伴い,局所は強い急性炎症々状のあと,深い壊死性潰瘍を形成した.末期の病変は全身性で著明な肝牌腫のほかに肺の症状が目立った.末血に異常リンパ球が出現し,皮膚には主として下半身に Weber-Christian 病に似た発疹がみられた.病理組織学的には histioncyticmedullary reticulosis に酷似した病変が目立ったが,マクロファージで赤血球よりも核片の貪食の方が優勢な点が原著の記載と異なっていた.一方,ところにより特異な核分葉を示す異型リンパ球様細胞の monomorphous な増生が病変の主体をなしており,さらに末血中に異型細胞の増生があり,これが T 細胞形質を示した点などから,むしろこれを T-cellmalignancy に近い病態と考えた.

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© 1983 日本皮膚科学会
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