日本皮膚科学会雑誌
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妊娠,分娩を無事経過しえた抗SS-A抗体陽性SLEの1例と抗RNP抗体陽性SLEの1例
松本 義也安江 隆
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1985 年 95 巻 10 号 p. 1085-

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抄録

妊娠,分娩を無事に経過しえた抗SS-A抗体陽性SLEの1例と,抗RNP抗体陽性SLEの1例とを報告した.症例1は34歳の女性で,昭和54年より蝶形紅斑,脱毛,日光過敏症,レイノー現象,関節痛が認められ,抗核抗体は陰性(核材はマウス肝)で,抗DNA抗体,抗Sm抗体,抗RNP抗体,抗SS-B抗体も陰性であったが,抗SS-A抗体は陽性であった.シェーグレン症候群は否定され,いわゆる抗核抗体陰性のSLEと考えられた.2回の妊娠,分娩を経験したが母子共に異常はなく,ステロイド剤も第1子出産時にのみ投与された.第2子に新生児エリテマトーデスは認められず,抗SS-A抗体も生後約6ヵ月には消失した.症例2は30歳の女性で,昭和46年より蝶形紅斑,関節痛,レイノー現象,発熱がみられ,抗核抗体は陽性,抗DNA抗体は低値陽性,抗Sm抗体,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体は陰性であったが,抗RNP抗体は高値陽性であった.出産時に母子に異常はみられず,プレドニソロン維持量も1日5mg以下であった.これら2症例では中枢神経症状,高度の腎症,著明な低補体血症は認められなかった.抗DNA抗体,抗Sm抗体が陰性または弱陽性で,抗SS-A抗体または抗RNP抗体が陽性であるようなSLEは,予後良好なSLEのサブセットであり,妊娠を許可しても特に問題はないであろうと考えられた.

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© 1985 日本皮膚科学会
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