日本皮膚科学会雑誌
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角層ケラチン線維―顆粒層形成を欠いたtrichilemma様角化の場合の角層ケラチン線維の電顕的,生化学的変化
手塚 正高橋 昌江
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1985 年 95 巻 6 号 p. 649-

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抄録

顆粒層の形成を欠いているが,核の消失など他の角化過程は形態学的に正常なtrichilemma様角化を示す遺伝性掌蹠斑状角化腫の角層を用いて角層ケラチン線維を正常人足蹠角層最外層のケラチン線維と電顕的および生化学的に比較検討した.電顕的に線維の走行形態,線維の太さ(正常:8.68±0.73nm,患者:8.90±0.92nm)共に両者間で有意の差はみとめられなかった.sodium dodecylsulphate polyacrylamide gel electrophoresis上,57Kdのケラチン線維ポリペプチドの消失が症例の角層ケラチン線維でみとめられた.しかし,同症例の,顆粒層を正常に生成する汗孔周囲の角層細胞でもみとめられたので,これはfilaggrinの無形成のためではなく,本症例の特殊な角化異常に基く,遺伝的変化であると考えた.

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© 1985 日本皮膚科学会
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