日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
実験的経上皮性排除現象におけるfibronectinの免疫組織学的研究
竹内 誠司
著者情報
ジャーナル 認証あり

1985 年 95 巻 7 号 p. 743-

詳細
抄録

モルモットの側腹部に2種の異物を皮内注射し,その異物排除現象におけるfibronection(FNと略)の関与を免疫組織学的に検討した.異物の1つはcharcoal activated powder(CAPと略)であり,他はCandida albicansの酵母形細胞(カンジダと略)である.後者はさらに1.0×108/ml生菌,死菌,および1.0×106/ml生菌(それぞれ108生菌,108死菌,106生菌と略)の3条件にわけて用いた.経毛包性排除を示したCAPにおいては,FNは真皮において浸潤細胞とともにCAPに密接して認められ,またCAPを取り込んで肥厚した毛包周囲に著明に認められた.カンジダにおいては108生菌においてのみ経上皮性排除がみられ,FNは膿瘍周囲,再生表皮周囲および異物排除後の真皮に著明に認められた.以上の所見より,CAPにおいてはFNは好中球とCAPの接着,好中球と基質の接着,および組織球の貪食に関与していることが推測された.またFNはCAPを捕捉した好中球の毛包への移動を容易にし,毛包への移動の方向づけを与えていることが示唆された.カンジダの108生菌においては,真皮内に生じた大きな異物を排除しようとする再生表皮の伸展,方向づけにFNが重要な役割を演じているほか,異物排除後の創傷治癒過程にも関与していることが考えられた.

著者関連情報
© 1985 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top