日本皮膚科学会雑誌
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純粋分離したラット肥満細胞におよぼすヒト蕁麻疹患者血清の影響
谷井 司
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1985 年 95 巻 8 号 p. 845-

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抄録

改良コイルプラネット型遠心分離機を用いてラット肥満細胞を純粋分離した.分離した肥満細胞は平均97%の純度で,形態学的に分離前と差がみられず,生物学的活性も保持していた.この肥満細胞を用いてラット肥満細胞脱顆粒試験の再評価を行った.慢性蕁麻疹患者血清とラット肥満細胞および皮内反応陽性抗原を反応させると抗原特異的な脱顆粒ないしヒスタミン遊離が若干例で認められた.しかし,ヒト血清添加による抗原特異的でない反応が高率に認められた.この反応の原因を追求するため,EDTAによる反応液中のCa++の減量,ヒト血清の熱処理(56℃,30分間),ヒト血清のラット赤血球による吸収試験を行い,それぞれでこの反応が抑制された.その結果,この非特異的な反応はヒト血清中のheterophil antibodyと補体が関与すると推定した.ヒト血清のラット赤血球による吸収操作により非特異的な反応を抑制して,再度ラット肥満細胞脱顆粒試験を施行したところ,軽度の抗原特異的なヒスタミン遊離が認められた.この反応がIgE抗体によるものか,それ以外の因子によるものかを調べるため,IgE型の反応増幅剤であるphosphatidylserineを添加してラット肥満細胞脱顆粒試験を行ったが抗原特異的な反応はみられず,上記の抗原特異的な反応はIgE抗体以外の因子によるものと推定した.以上のことより純粋分離した肥満細胞を用いたラット肥満細胞脱顆粒試験はIgE抗体の検出法としては不適と考えられるが,肥満細胞に対する血清の直接作用をみれるという点で,アレルギー患者血清中の種々の肥満細胞傷害因子の検索に有用と考えられた.

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