日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
高校硬式野球選手にみられた皮膚疾患のスポーツ皮膚科学的研究
工藤 素彦帷子 康雄橋本 功鳴海 吾郎
著者情報
ジャーナル 認証あり

1985 年 95 巻 8 号 p. 883-

詳細
抄録

高校硬式野球選手76名に対して皮膚科的検診を実施し,観察された皮膚疾患を,その発生ないし悪化がスポーツ訓練と関連があると考えられるもの(スポーツ性皮膚疾患)と関連がないと考えられるもの(非スポーツ性皮膚疾患)とに分類した.そして,それぞれについて罹患率,1人当りの疾患の種類,個々の疾患の頻度と程度などを調査した.また,これら疾患のうち,訓練を妨害している疾患(妨害疾患)について,その罹患率,1人当りの疾患の種類数,妨害の程度などを調査した.この際,妨害の大きさの指標として妨害指数HIなる概念を新しく考案し,妨害疾患の妨害程度を簡単に把握することができるようにした.その結果,非スポーツ性皮膚疾患としては尋常性痤瘡,足白癬など6種の疾患が選手の47%に観察され,1人当りの疾患の種類数は1.1種であった.訓練妨害は罹患選手の6%において認められ,HIは尋常性疣贅において最も大きかった.一方,スポーツ性皮膚疾患としては,胼胝腫,外傷性瘢痕,摩擦水疱,足白癬など12種の皮膚疾患が選手の99%に観察され,1人当りの疾患の種類は2.2種に達していた.訓練の妨害は罹患選手の51%に認められた.妨害疾患のうちでは胼胝腫の頻度が最も高かったが,HIは摩擦水疱のそれが最も大きかった.妨害疾患の原(誘)因として,多汗22%,訓練による必然的結果20%,フォームや動作の不適当19%,指導方法不適当17%,吸湿性の悪い化繊靴下の使用14%などが推定された.妨害疾患の排除対策を検討した結果,用具(靴下や靴)の改善や抗白癬剤の外用により,その妨害の28%は比較的容易に排除することが可能と考えられた.

著者関連情報
© 1985 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top