日本皮膚科学会雑誌
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Pam細胞および培養ヒト表皮細胞より抽出した類天疱瘡抗原タンパクについて
清水 宏
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1986 年 96 巻 1 号 p. 45-

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抄録

水疱性類天疱瘡(BP)の病因の基盤と考えられる類天疱瘡抗原タンパク(BP-Ag)の同定をPam細胞(マウス由来培養表皮細胞株)から抽出したタンパクを用いて行なった.まず螢光抗体間接法でPam細胞膜にBP-Agが存在することを確認し,さらに抗基底膜部抗体(BMZ-Ab)がPam細胞のホモジネート(TBS buffer)により吸収されることを示した.BP-Agの同定にはウェスタンプロッティングの方法を応用した.すなわちPam細胞から2%SDS含有bufferにて抽出し,SDSポリアクリルアミド(4%)スラブゲル電気泳動にて分離したタンパクをスラブゲルからニトロセルロース膜へトランスファーし,BMZ-Abを有する5例の類天疱瘡患者血清(BPS)および5例の正常ヒト血清(NHS)と反応させたところ,NHSでは全例陰性であったが,BPSでは5例全例でそのBMZ-Abと結合性を有する数種類の陽性タンパクを認めた.陽性タンパクの分子量はそれぞれ約32Kd,36Kd,45Kd,48Kd,140Kd,160Kdであったが,これらすべてが全症例に共通して陽性を示すのではなく,特定の症例においてのみ陽性を示すものもあった.さらにBPSおよびNHSよりProtein A Sepharoseカラムにて精製分離したIgG分画で同様の実験を行なったところ,全血清を用いた場合と同様の結果を示し,これらのタンパクは正常人IgGとは反応しなかった.また培養ヒト表皮細胞より抽出したタンパクについても同様の実験を行なったところ,4例のNHSとの結合は陰性であったが4例のBPSと結合する数種類のBP-Agと考えられる陽性タンパクが見い出された.以上より①BP-Agは単一なタンパクではなく多様性であり,抗原性の異なる複数のタンパクにより構成されている.②BP-Agは分子量32Kd,36Kd,45Kd,48Kd,140Kd,160Kdなどのタンパクである可能性が高い.および③BMZ-Abは全症例で均一な性状を示すのではなく多様性があり,症例個々によりそのBMZ-Abが対応するBP-Agのタンパク数,種類に差のあることが示唆された.

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© 1986 日本皮膚科学会
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