1986 年 96 巻 11 号 p. 1117-
劣性栄養障害型表皮水疱症に伴う手指の癒着,変形には従来積極的な加療がなされておらず,今後の発展が待たれる分野である.我々は6例9手の屈曲拘縮に対して再建術を行ない,その治療経験を報告した.術前処理として高カロリー製剤・鉄剤の投与也輸血を施こし,貧血及び低栄養状態の改善を計った.麻酔時には挿管は行なわず,上肢伝達麻酔を主体とし,マスク・モニタリングの周辺には圧迫を和げるためスポンジを接着した.手術手技は,まず患部の表皮を一塊として手袋状に剥脱した後,指間を愛護的に解離し,皮切をおき拘縮をとる.伸展・開排位保持にはキルシュナー網線にて内固定し,皮膚欠損部に全層植皮を施した.術後約3週間後に抜釘し自動訓練を行ない,現在良好な成績を得られている.以上の治療は,皮膚科,整形外科,小児外科,麻酔科医等の協調のとれたグループワークと家庭での適切なスキンケアが不可欠と思われる.