日本皮膚科学会雑誌
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三十数年間,無治療で経過した晩発性先天梅毒の1例
宇佐神 治子大橋 勝川島 弘三三浦 克敏
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1986 年 96 巻 9 号 p. 937-

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抄録

42歳,女性.6歳頃までは普通の元気な女児であったが,6~10歳位の間に,顔面,頚部,口腔内,左前腕,左右両下肢に病変を生じた,晩発性先天梅毒の1例をのべた.それぞれの病変部は,瘢痕による著明な変形を来たした.そのため右眼は失明,左下肢の歩行は不能となった.41歳頃に左足関節前面の瘢痕に有棘細胞癌を生じた.左下肢の変形と癌による出血性潰瘍のため,左下肢切断を行なった.切断された左下肢は著明な廃用萎縮(筋肉と骨の萎縮と脂肪変性)がみられた.その術前検査の梅毒血清反応陽性が手がかりとなり,先天梅毒と診断した.それ以前の三十数年間はいくつかの科で医師の治療を受けていたが,すべて対症療法に終始し,梅毒の治療である抗生物質を注射,または内服したことはなかった.梅毒血清反応は,TPHA,204,800倍,ガラス板法,320倍だった.

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© 1986 日本皮膚科学会
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