日本皮膚科学会雑誌
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天疱瘡における水疱形成阻止因子の検索
内藤 勝一
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1987 年 97 巻 11 号 p. 1231-

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抄録

天疱瘡の水疱(棘融解)形成には,ケラチノサイト由来のセリン系タンパク分解酵素であるplasminogen activator(PA)およびplasminがその最終段階において直接関与しているものと考えられている.そこで本実験では,aprotininのほか,セリン系タンパク分解酵素阻害剤と考えられているもののうち,既に他疾患において臨床応用されている薬剤(FOY,FOY-305,FUT-175)および正常人血漿中に本来存在するnatural(protease)inhibitorのうちα1-proteinase inhibitorとα2-macroglobulinを選定し,それらのPAおよびplasminに対する阻害効果をまず生化学的にin vitroで検討した.次いで,天疱瘡の疾患モデルを正常ヒト皮膚器官培養系および新生児マウス実験系を用いて作成し,これらが実際に水疱形成阻止因子となり得るか否かを比較検討した.その結果,上記臨床薬剤およびα1-proteinase inhibitorは,程度の差はあるものの,1)生理学的にPAおよびplasmin活性の両方を,あるいはplasmin活性をより特異的に阻害し,2)また実験モデル系においても棘融解形成阻止が可能であった.以上の結果は,天疱瘡の水疱形成阻止上,タンパク分解酵素阻害剤の臨床的有効性を示唆するものであり,本疾患治療上,一つの大きな展望を拓くものと考えられる.

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© 1987 日本皮膚科学会
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