日本皮膚科学会雑誌
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皮膚におけるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の存在意義―特に黄色ブドウ球菌との関連について 実験的動物感染症
池田 政身
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1987 年 97 巻 14 号 p. 1631-

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抄録

マウスを表皮ブドウ球菌(以下表皮ブ菌)とFreund complete adjuvant(以下FCA)にて前処理した後,表皮ブ菌および黄色ブドウ球菌(以下黄色ブ菌)を各種濃度組み合わせで皮内接種し,生じた皮膚病変の病理組織学的所見および蛍光抗体法の所見を経時的に観察した.また各マウス血清と両菌種の分離菌体成分との間で二重拡散法を施行した.表皮ブ菌とFCAにより前処理したマウスでは,未処理群に比し両菌種共,菌皮内接種時の病理学的変化が早くかつ強く出現した.蛍光抗体直接法では前処理マウス群において黄色ブ菌皮内接種群で抗マウスIgG,A,MおよびC3の沈着がみられたが,表皮ブ菌接種群では抗マウスIgG(Fc)およびIgMのみの沈着がみられた.二重拡散法の結果では前処理群に表皮ブ菌に対する抗体が証明された.また,黄色ブ菌に対する抗体も前処理群の方がtiterが高いと思われた.以上の所見から,表皮ブ菌による前感作はマウスのブ菌に対する抗体産生を増加させ,ブ菌皮内接種時の病理組織学的変化を増強させる.つまり表皮ブ菌による前感作は黄色ブ菌感染症の発症の修飾因子となり得ると思われた.

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© 1987 日本皮膚科学会
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