1988 年 98 巻 12 号 p. 1235-
40歳,女性.Cytophagic histiocytic panniculitisに相当すると考えられる1例を報告すると共に,免疫組織化学的および電顕的検討を加えた.発熱とともに有痛性の皮下結節が多発し,経過中に一部の皮疹に表皮の壊死がみられ,また肝脾腫,汎血球減少,凝固系異常を含む出血傾向がみられた.組織学的には,当初皮下脂肪織に類上皮細肪肉芽腫を一部にみる,異型性に乏しい単核細胞主体の細胞浸潤からなる脂肪織炎であったが,経過中に,erythrophagocytosisをみるマクロファージが散見されるようになった.治療としてCHOPによる化学療法を施行し,皮疹および全身症状の著明な改善をみた.免疫組織学的,電頭的検索では,浸潤細胞において,単球-マクロファージ系細胞に分化や異型をみとめず,しばしば軽度の核異型をみる細胞はT細胞と考えられた.以上から,本症は組織球系の異常症というより,リンパ球系とくにT細胞の異常症で,二次的にマクロファージの増殖をみたものである可能性が示唆された.