日本皮膚科学会雑誌
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組織内脈管内皮細胞の生物学的性状の検討―第3報,抗VWFマウス単クローン性抗体による検索―
鈴木 裕介東 一紀増澤 幹男西山 茂夫
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1988 年 98 巻 4 号 p. 409-

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抄録

抗von Willebrand factor(VWF)マウス単クローン性抗体を用いた免疫組織化学により各種脈管性皮膚疾患を染色し,抗第Ⅷ因子関連抗原(factor Ⅷ-related antigen,FⅧ-RAg)ウサギ抗体の染色所見と比較検討した.その結果,正常・病的を問わず,抗VWF抗体の方が抗FⅧ-RAg抗体よりも背景の非特異的染色性がはるかに少なく,抗VWF抗体の陽性像はすべて特異的局在を示した.疾患別にみると,Pseudo-Kaposi肉腫においては,抗VWF抗体では管腔様構造をとりながら増生する内皮細胞(endothelial cell,EC)のみに一致して陽性像を得たが,抗FⅧ-RAg抗体ではこの像以外に細胞の分布とは関係のない不規則な浸み出し状の陽性像を得た.また毛細血管拡張性肉芽腫および単純性血管腫において,抗VWF抗体では,特に管腔形成部位の管腔壁に沿って線状に全周性に陽性像を呈したが,集塊状増殖部位のEC細胞質に対しては弱陽性であった.モンドール病における抗VWF抗体では狭窄した管腔壁に配列するECに対して特異的に陽性像を得た.尚,これらの血管腫,モンドール病における抗FⅧ-RAg抗体染色所見は,抗VWF抗体染色所見と同じ局在を呈した.リンパ管腫では,抗VWF抗体により明らかに陰性のものから扁平化したECの一部に特異的局在を示すものまでみられたが,抗FⅧ-RAg抗体よりもはるかに非特異的染色性の少ない局在を得た.以上より,抗VWF抗体を脈管性皮膚疾患に応用することは,組織内血管の同定,血管とリンパ管との鑑別により一層役立つものと考える.

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© 1988 日本皮膚科学会
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