1988 年 98 巻 5 号 p. 571-
皮膚器官培養系におけるepibolyの形成は,表皮細胞の分裂と増殖には関係なく,既存の表皮細胞の遊走によって起きる現象であるとされている.今回我々は,表皮細胞遊走の新しい機序としてプロテアーゼの関与を想定しこれを明らかにする為に,新生マウス皮膚器官培養系に各種プロテアーゼ阻害剤を添加しepibolyの長さ即ち遊走長を培養24,48時間後に組織学的に測定し対照と比較検討した.就中,セリン系プロテアーゼの阻害剤であるcamostat mesilate添加培養にて,表皮細胞の遊走は明らかな濃度依存性を示して阻害された.即ち,表皮細胞の遊走にはある種のセリン系プロテアーゼが関与していることが示唆された.