日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動による正常ヒト毛ケラチンの分析
勝海 薫
著者情報
ジャーナル 認証あり

1988 年 98 巻 6 号 p. 619-

詳細
抄録

正常ヒト毛髪を尿素,dithiothreitolで可溶化後,iodoacetamide(IAA)でアルキル化し,毛ケラチン蛋白を抽出した.抽出蛋白を等電点と分子量による二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D-PAGE)で分析した.毛ケラチンには,毛線維蛋白(HFP)と毛基質蛋白(HMP)が存在し,2D-PAGE上,HFPは分子量41.5k,43k,58.5k,59k,等電点pH5.1~6.8のポリペプチド群であり,HMPには,分子量15k~28kの酸性ポリペプチド群(aHMP)と塩基性ポリペプチド群(bHMP)が存在することが判明した.さらにaHMPを詳しく分析する目的で,抽出蛋白のゲル濾過分画の2D-PAGEを行ったところ,分子量15k,20k,26k,28k,等電点pH5.0~7.0のaHMPポリペプチド群が明瞭に分離された.また,抽出蛋白をイオン交換クロマトグラフィーで分画することにより,bHMPポリペプチド群が分子量18.5k,26k,28k,等電点pH7.8~8.8の明らかなスポットとして分離された.同時に等電点pH8.0~9.0,分子量30k以上の範囲にultra-high-sulphur proteinの帯状のスポットが認められた.以上の方法により,毛ケラチン蛋白全体の等電点・分子量による2D-PAGEが可能となり,あらたにaHMPとbHMPの分画の存在が碓認された.本法は,今後,種々の毛髪疾患における毛ケラチン蛋白の分析に極めて重要な方法になると考えられる.

著者関連情報
© 1988 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top