日本皮膚科学会雑誌
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Trichorrhexis Nodosa―特にWet-SEM (低真空走査型電子顕微鏡)による観察と病毛表面X線微小分析について―
中川 浩一庄司 昭伸濱田 稔夫浅井 芳江
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1988 年 98 巻 9 号 p. 891-

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抄録

18歳,男性に生じたtrichorrhexis nodosaの毛髪をWet-SEMを用いて検討した.臨床的には毛髪に多数の白色の点(white flecking)が認められ,その部で容易に断裂した.光学顕微鏡下では2つの絵筆を組み合わせた様な像として観察された.Wet-SEMを用いて未固定,未脱水,未蒸着毛髪を観察すると,結節部では,毛小皮がはがれ,露出した毛皮質はケラチン束が離解,断裂,交差したような,いわゆるpaint brush fractureの像が得られた.患者,および患者と同年齢,同性の健常人4名の毛髪に対して表面のX線微小分析を行うと,いずれも珪素,硫黄,カリウムを主成分として含有するが,患者毛髪では健常人毛髪に検出されないカルシウム,チタン,ニッケル,亜鉛の各元素が非結節部毛小皮,結節部露出毛皮質の一方,あるいは両方に検出された.毛髪の研究におげるWet-SEMの有用性は十分に評価され,またX線微小分析装置の装着によりその応用性は更に広がると考えられる.

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© 1988 日本皮膚科学会
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