日本皮膚科学会雑誌
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高年型アトピー性皮膚炎
河島 岳史小林 早由美宮野 径彰大屋 尚之成瀬 知恵子徳田 安章
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1989 年 99 巻 10 号 p. 1095-

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抄録

従来アトピー性皮膚炎は乳児小児の疾患で自然治癒傾向があり,35歳以上殊に高齢者ではまれとされている.一方思春期成人型のアトピー性皮膚炎の増加が懸念され更にその中に難治のものが数多くみられつつある.アトピー性皮膚炎(以下AD)の本体が未だ確立されていない現時点では高IgE血症を含み,いくつかの症候から診断をせざるを得ない.我々は現在東京医大AD診断基準を用い症例の蓄積を試みているがその中で50歳以上の症例も散見される.一般に50歳は皮脂分泌能の低下の起こる時期とされているが,この期を境としたより高齢のADとより若年のそれとの比較を行い高齢者におけるADの特徴を求めた.その結果思春期成人期からの継続として皮脂欠乏性湿疹を始め種々臨床像をとり,IgERIST高値で,複数抗原に皮膚反応陽性,食事抗原中殊にスパイスの陽性率が高かった.しかし若年のADと較べ血清IgEおよびIgG4値は低く,特異的減感作療法の有効率も低かった.より若年のADのように単一の病像を呈していないが,管理の不十分さが高齢までのADをもたらしている可能性がありまた積極的な抗アレルギー療法の導入も必要と考えられ,これらの点が臨床上重要と思われる.

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© 1989 日本皮膚科学会
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