日本皮膚科学会雑誌
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毛根細胞の初代培養法―その培養に適した条件の検討―
谷垣 範子中村 昇二兼久 秀典政本 幸三喜多野 征夫
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1989 年 99 巻 11 号 p. 1145-

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抄録

C3Hマウスの皮膚を酵素処理することにより毛根を大量に分離し,その細胞培養条件を検討した.毛根細胞がシャーレに付着するためには,血清が必要で10%が最適濃度であった.collagenで被覆したシャーレを用いると,細胞付着率は約2倍に増加した.次いで毛根細胞の増殖に適した培養液について調べた.無血清培地MCDB153で培養すると,混入した真皮線維芽細胞が増殖することなく毛根細胞の培養に適していた.また,細胞が増殖するためには3×104cells/cm2以上の細胞密度を必要とした.MCDB153に添加する牛脳下垂体抽出液(BPE)は毛根細胞の増殖に重要で,BPEを欠いた培養液では細胞は全く増殖しなかった.またEGFとinsulinも増殖に影響があった.培養3日目の毛根細胞のケラチン分析を行ない,培養前の毛根および表皮と比較した.培養前の毛根と培養3日目の毛根細胞の両者におけるケラチンパターンの相違はなく,それらと表皮とは大きな相違があった.今回毛根細胞の培養条件を検討することにより,真皮線維芽細胞が混入することなくその初代培養が可能となった.

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© 1989 日本皮膚科学会
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