日本皮膚科学会雑誌
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ケロイド組織内におけるトラニラスト濃度について
早稲田 豊美
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1989 年 99 巻 11 号 p. 1159-

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抄録

抗アレルギー剤トラニラスト(開発記号N-5')の薬理作用はmast cellよりのchemical mediator遊離抑制によるといわれているが,その臨床における問題点の一つは即効性がないことである.効果の発現が投与直後よりみられず1~4週遅れて発現するのであるが,その理由を合理的に説明できる報告はない.血中濃度は速やかに立ち上がり,かつ基礎実験において即効的にmast cellの脱顆粒を抑制するにもかかわらず効果発現が遅れる理由は全く不明である.著者はこの原因がトラニラストの組織内濃度の上昇の遅延によるものか否かを検討するため,ケロイド手術患者をトラニラスト術前投与期間別に5群(非投与・3日・2週・4週・8週以上)に分けて採取ケロイド内の組織内濃度を比較検討した.その結果,非投与群を除く各群の間に有意の差は見られず,よってトラニラストの効果発現の遅延する理由は組織内濃度の立ち上がりが遅いためではないことが示唆された.

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© 1989 日本皮膚科学会
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