日本皮膚科学会雑誌
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強皮症における抗カルジオリピン抗体の臨床的意義
佐々木 哲雄飯吉 英理子中嶋 弘
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1989 年 99 巻 14 号 p. 1473-

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抄録

強皮症における抗カルジオリピン抗体(ACL)の臨床的意義を明らかにすることを目的に,ACLと他の検査所見,臨床所見との相関を検討した.対象は全身性強皮症(PSS)25例,混合性結合組織病(MCTD)5例,overlap症候群2例,限局性強皮症10例で,血清ACL(IgG,IgM)の測定はenzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)で行った.ACL-IgGあるいはIgM陽性はPSS44%,限局性強皮症40%,MCTD20%でみられた.PSSにおいてはACL陽性例はその64%に抗セントロメア抗体を,ACL陰性例はその71%に抗Scl-70抗体を認め,ACL陽性例は皮膚硬化が末梢にとどまる軽症例も多く,舌小帯短縮と肺線維症は陰性例より少なかったが,乾燥症状,毛細血管拡張症,網状皮斑,静脈瘤は陰性例よりも多かった.網状皮斑は軽症なものが多く潰瘍を伴う例はなかった.限局性強皮症においてはACLは単発型よりも多発型で,さらに抗DNA抗体が陽性となりやすい若年発症の症例で陽性となりやすい傾向がみられた.限局性強皮症ではACLにしばしば伴うとされている網状皮斑や潰瘍などの皮膚症状はみられず,疾患によりCL抗原が同一でなく,それに対応するACLも多様であることが推察された.

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© 1989 日本皮膚科学会
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