日本皮膚科学会雑誌
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Tricholemmal keratosisの7例―病理組織学的検討―
安岐 敏行三原 基之石原 政彦阿曽 三樹島雄 周平
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1989 年 99 巻 14 号 p. 1481-

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抄録

Tricholemmal keratosisの7例を報告した.症例は,1例を除き60歳代以上で,男性5例,女性2例であった.発生部位は5例が顔面,2例が前腕と全て裸露部であった.組織学的に,その増殖態度はかなり異なり,我々は上皮の増殖形態により,本症を単純型と増殖型に大別した.著明な過角化を示す角層を除けば,上皮は単純型では,比較的平坦で外毛根鞘性角化のみであるのに対し,増殖型ではV字状ないしU字状に上下両方向に増殖し一部に類表皮角化もみられた.PAS染色では,単純型はいずれも陰性,増殖型ではすべてに陽性であった.臨床的に,単純型は経過が長いが小型であるのに対し,増殖型では経過が短いのに大型である傾向がうかがえた.以上,単純型と増殖型には増殖態度のみならず,臨床的にも違いがみられ,tricholemmal keratosisが異なるentityを内包する可能性を示した.その他,PAP法によるhuman papilloma virusの検索はすべて陰性,DACM染色では単純型,増殖型とも正常表皮とほぼ同様の所見を得た.

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© 1989 日本皮膚科学会
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