1989 年 99 巻 7 号 p. 827-
症例,81歳,男性.約20年前,下腹部に結節が生じているのに気づいたが放置していたところ徐々に増大してきた.初診時には6cm×6.5cm,高さ3cmの不正形円盤状に隆起した腫瘤となり,下床とは癒着していなかった.割面は黒ずんだ黄色,半透明,ゼリー状であった.病理組織学的には粘液様物質の中に小腫瘍塊が浮遊するかのような特異な像を示し,腫瘍細胞には異型性はみられず,一部管腔構造をなしていた.粘液様物質は組織化学的にsialomucinと推測された.自験例は1971年,Mendozaらにより提唱されたmucinous carcinoma of the skinに一致するもので,本腫瘍は免疫組織学的,電顕的検索によりエックリン汗腺分泌部由来と考えられた.