芸術工学会誌
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京都市を中心とした屋外広告物規制事例の印象評価(建築・環境デザイン)
武山 良三
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2011 年 55 巻 p. 37-44

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抄録

本研究は、景観デザインの中で屋外広告物のコントロール手法について考察するものである。今日の自由主義社会において、事業者はそれぞれの経済活動の中で自らの存在を社会に知らせるために広告を行っている。屋外広告物は、事業所の所在を示すためなどに設置されるが、町並みの中で注目される必要があることから大きな文字や高彩度高明度な色彩が用いられる傾向がある。そのため屋外広告物は周辺景観の調和を乱す要素として問題視されている。そこで、伝統的な町並み保存に力を入れている京都市では、屋外広告物規制を強化し良好な景観の回復に努めている。広告物の大きさや高さだけでなく、質的要素である色彩について制限を加える施策を導入している。平成16年10月の景観法施行に伴って屋外広告物法が改正されたことから、全国の自治体が屋外広告物条例の見直しを行っているが、改正にあたっては京都市を前例として色彩に関する規制を導入する自治体もある。しかし、京都市が導入する規制が本当に効果があるのかの検証は行われていない。従って、このことを印象評価の観点から確かめることは有意義なことである。本論文では、屋外広告物に対してどのような規制を加えることが効果的であるかを明らかにすることを目的とした。研究方法としては、まず京都市内において規制を受けた屋外広告物の事例を写真で収集し、次に規制される前の標準型事例を、規制された事例とできる限り類似する状況で収集した。収集後、規制前と変更後の写真を対にした調査用刺激を作成し印象調査を実施した。提示した刺激がどのような方法で規制されたかを分類し、規制方法と受ける印象の関連性を分析した。最後に、調査を通して明らかになった事項を総合的に捉えて、効果的な規制手法についての考察を行った。その結果、(1)事業者が自主的に行ったデザイン変更は効果がある、(2)媒体を素材から変更したデザインは効果がある、(3)京都市の地色を白にする規制及び面積を制限する規制は、京都らしいイメージづくりに効果が見られるもののデザイン評価を低下させている。(4)京都市の高明度高彩度な色彩を抑える規制は効果が認められる、という点が確認できた。

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