抄録
近年、VUCA 時代を生き抜く企業人の資質として「オタク人材」が注目を集め始めている。一方で、もともとオタクの割合が多いと考えられる産業では、オタク人材に対して、一般企業とは異なる期待感を有していると想定される。そこで本研究では「趣味として何らかのことがらに没入することによって獲得/伸長されることが期待される能力であり、他の領域においても活かせる力」を「オタク力」、オタク力を持つ人材を「オタク人材」と定義した。そのうえで、ゲーム産業で企業が期待するオタク力の可能性について、M-GTA を援用して検討した。その結果、オタク人材を採用する工夫について2 つ、オタク力の可能性について3 つ、オタク力を活かす環境について2 つ、合計7 つの概念が抽出され、概念図が形成された。ストーリーラインでは「一つの事柄に没入するプロセスにおいて獲得した、最後までやり抜く力と、自らの活動を積極的に情報発信する力、そして活動を通して出会った仲間を結び付ける力が、相互にプラスの影響を与えながら業務に活かせる可能性がある。またオタク人材の獲得には、作品選考と面接の工夫が必要である。加えて、オタク力を活かすうえで、オ
タク人材にとって居心地の良い空間と、オタク力を持つマネージャの存在が必要である」ことが示唆された。