薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
新規血栓溶解薬YM866の薬物動態に関する研究[I]:ラットに125I-YM866を単回静脈内投与したときの分布,代謝および排泄
及川 桂史神村 秀隆渡辺 隆宮本 郁夫樋口 三朗
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1996 年 11 巻 1 号 p. 1-10

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抄録
125I-YM866をラットに単回静脈内投与したときの血漿中濃度,分布,代謝および排泄について検討し,以下の結果を得た.
1.125I-YM866を静脈内投与したとき,本薬の過半量が速やかに血漿中の蛋白と2種の高分子複合体を形成し,これが血漿中における主な消失過程の一つと考えられた.血漿中の総放射能に対するTCA沈澱性放射能の割合は経時的に減少し,本薬が低分子分解物あるいは遊離の125Iへ分解代謝されることが示された.免疫反応性YM866濃度は投与後5分では総放射能濃度の約3/4を占めたが,総放射能濃度およびTCA沈澱性放射能濃度より速やかに消失した.
2.125I-YM866を静脈内投与したとき血漿中放射能濃度はいずれの組織の濃度より高かった.高い放射能濃度を示した組織は血液,肝臓,腎臓,副腎,脾臓,肺および甲状腺であったが,いずれの組織も血漿中濃度の1/4から1/2であった.脳内濃度は血漿中濃度の1/100と極めて低かった.各組織からの放射能の消失は速やかであった.投与後の主要組織中の放射能の大部分は高分子画分であるTCA沈澱性画分に存在したが,その害拾は経時的に減少した.
3.125I-YM866を静脈内投与後144時間までに投与した放射能の91.2%が尿中に,3.9%が糞中に排泄された.尿中に排泄された放射能のほとんどがTCA可溶性画分に存在し,ゲル濾過高速液体クロマトグラフィの結果から低分子物質として排泄されることが示唆された.
4.125I-YM866の実験結果を125I-t-PAの報告と比較検討した結果,YM866は肝臓への移行が低いことも一因となってt-PAより高い血漿中濃度を示し,それがより強い血栓溶解作用の発現に結びついていると考えられた.
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