抄録
ウサギの歯科疾患の診断に頭部X線検査がよく行われている。しかし,歯列や咬合を評価するための側方像では左右の歯列が重なるため,個々の歯と歯周組織の病理的変化については判定が困難であった。今回,ウサギの頭蓋を用いて,開口斜位方向での撮影方法を検討したところ,右側横臥位に保定し開口したまま頭部を約45度回転して撮影することで切歯を含む右上顎の歯列,さらにその位置から,左下顎の歯列がフィルム面と平行になるまで下顎の先端を持ち上げて撮影することで切歯を含む左下顎の歯列を他の歯列と重なりなく描出することができた。また,左側横臥位で同様に撮影することで左上顎,右下顎の歯列を描出できた。この方法を臨床例に応用したところ,各列の鮮明な画像が得られ,今後個々の歯や歯周組織の詳細な観察が必要な場合の撮影法として非常に有効な方法と考えられた。