動物臨床医学
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原著
猫の乳腺癌組織におけるHER2/neuタンパクの発現について
山本 充哉
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2016 年 25 巻 2 号 p. 52-56

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抄録

本研究の目的は,猫の乳腺癌組織においてヒトのポリクローナル抗体を用いて,HER2/neuタンパクの発現を調査することである。ヒトの乳腺腫瘍の約15‒20%はHER2/neuタンパクの過剰発現があるとされ,悪性度の増加と予後の低下に関連するとされている。猫では,2005年にWinstonらがヒトのポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を用いて,猫の乳腺癌でそれぞれ90%(27頭/30頭),76.7%(23頭/30頭)でHER2/neuタンパクの過剰発現を報告している。そこで,ヒトのポリクローナル抗体を用いて猫のHER2/neuタンパクの過剰発現が確認できるのであれば,分子標的薬であるHER2阻害剤の臨床治験が有望であると仮説を立て,ヒトのポリクローナル抗体を用いてHER2/neuタンパクの発現を追試した。2013年9月から2015年10月に,根治的片側乳腺切除を行った13例から得た25腫瘤を対象とした。腫瘍組織でのHER2/neuタンパクの発現についてはヒトのポリクローナル抗体を用いて免疫組織染色を行った。HER2/neuタンパクの発現は13症例中1症例でのみ(7.7%)で認められた。これらの結果は,ヒトポリクローナル抗体を用いて高い検出率であったWinstonらの報告とは異なる結果であった。HER2/neuタンパクの発現はさらなる研究が望まれる。

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