動物臨床医学
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症例報告
猫伝染性腹膜炎ウイルスの関与が疑われた拡張型心筋症様疾患の猫2例
吉田 智彦市川 直紀小池 仁彦弘川 拓笹岡 一慶町田 登田口 正行
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2016 年 25 巻 4 号 p. 148-152

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抄録

猫2症例が腹囲膨満,食欲不振,呼吸促迫を主訴に来院した。超音波検査を行ったところ,左室の拡大および左室内径短縮率の著しい低下が認められたため,拡張型心筋症(DCM)と診断した。両症例とも,内科治療に反応したが全身状態悪化により死亡した。その後,死後数時間で剖検を行った。剖検所見として,複数の臓器に化膿性肉芽腫性炎症病変が散見され,また心臓においては,炎症細胞の浸潤が認められ心筋炎および心筋線維化が散見された。以上の所見から,両症例は猫伝染性腹膜炎(FIP)と診断され,心臓超音波検査によりDCMと考えられた所見は,FIPウイルスによる心筋炎によって引き起こされた可能性が示唆された。本症例のように,DCM様の病態を引き起こす要因としてウイルス感染症を含め様々な疾患が考えられるため,超音波検査所見のみではなく,各種検査結果からDCM様の病態を引き起こす可能性がある疾患を鑑別しなければならないことが考えられた。

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