動物臨床医学
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症例報告
膵仮性嚢胞に対し嚢胞―十二指腸吻合術を実施した猫の1例
島田 香寿美八色 暁吉田 智彦合屋 征二郎馬 丹夫Chantawong PinkarnKitpipatkun Pitipat宮﨑 謙二郎土光 泰生白石 健士郎加藤 光之介竹内 亜樹小材 祐介田中 綾
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2020 年 29 巻 2 号 p. 78-83

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抄録

猫の膵嚢胞は非常に稀で,これまでの報告では,真性嚢胞の2例と仮性嚢胞の2例のみが認められる。本症例は11歳の猫で,近医で超音波検査にて膵嚢胞が疑われ,内科管理と経皮的ドレナージで治療されていた。一時的に状態は回復したが,食欲不振,黄疸が再発したため,外科的介入を目的に当院を受診した。試験開腹にて,巨大膵嚢胞による総胆管および膵管の狭窄が認められた。切除が構造的に困難であったため,嚢胞―十二指腸吻合術を選択した。術後,全身状態は回復し,高ビリルビン血症は改善し,嚢胞サイズは縮小を維持した。病理組織学的検査にて,この膵嚢胞は腫瘍性変化も上皮の裏打ちもなく,慢性・増殖性・多細胞性炎症が観察された。これらの結果から,この膵嚢胞は炎症に続発した膵仮性嚢胞であると診断された。本症例報告は,猫の膵仮性嚢胞に起因する臨床徴候と高ビリルビン血症に対して嚢胞―十二指腸吻合術が奏功した最初の報告となる。

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