動物臨床医学
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原著
犬慢性肝炎の脂肪組織分布の評価および腹腔鏡下脂肪組織採取の検討
−脂肪組織を利用した細胞療法に向けて−
佐藤 慶太阪本 裕美中山 智宏坂井 学
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2022 年 31 巻 1 号 p. 15-20

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抄録

脂肪組織由来間葉系幹細胞は進行した慢性肝炎の犬の細胞療法に期待される。しかし,進行した慢性肝炎の犬では栄養状態の悪化から細胞源である脂肪組織の採取部位について検討する必要がある。本研究では,慢性肝炎の犬の脂肪組織の分布と採取について検討した。慢性肝炎の犬25頭(うち進行群11頭,非進行群14頭)を研究対象とした。慢性肝炎・進行群では皮下脂肪面積が腹腔内脂肪面積と比較して有意に低値を示した。また,慢性肝炎・進行群は慢性肝炎・非進行群と比べて腹腔内脂肪面積/皮下脂肪面積比が有意に高値を示した。さらに,慢性肝炎・進行群の犬1頭で腹腔鏡下脂肪採取を試みた結果,生検鉗子で容易に採取が可能であった。以上の結果から,進行した慢性肝炎の犬において,腹腔鏡下肝生検の際に腹腔内脂肪組織を同時に採材することで,脂肪組織由来間葉系幹細胞に必要な十分な細胞源を安全かつ容易に採取することが可能と考えられた。

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