抄録
イネの耐塩性の品種間差の発現機構を知るため,等浸透圧養液栽培の生育の比較,Na吸収に及ぼす根切除あるいは呼吸阻害剤の影響の検討,さらにはNaの吸収・移行あるいは根の ATPase 活性の経日変化等を比較する実験を行った。得られた結果の概要は以下の通りである。 1)80mM前後のNaCl添加処理による地上部生育反応の品種間差は,おもにNaのイオン害に対する反応の差によってもたらされる。 2)地上部へのNaの集積の品種間差は,根のNa保持能と,Na排除能の両方の影響を受ける。 3)Na保持能の小さい品種はNaCl添加処理によるATPase活性の低下が顕著であり,ATPase活性の低下は葉身あるいは地上部へのNa集積を促進する場合が多かった。したがって,Na保持能とNa排除能には生理的に何らかの関連があり,保持能の小さい品種は,NaClを含む溶液内で,Na排除能がより早く低下するものと考えられた。