抄録
土壌断面データを用いて農地土壌分類の灰色低地土の地下水湿性型と灌漑水質性型の区分を試みた.区分基準としては両者に特徴的に現われる斑紋の形態を用いた.その結果は以下のようになった.1)全国の灰色低地土の斑紋の記載のある断面データ(約5000断面)のうち約6割が細区分された.2)細区分された両土壌は,灌漑水質性のほうが構造が発達し,下層土の圧密が進んでいるなど異なった性質を示した.また,現行の灰色系,灰褐系との間に両者は明瞭な対応関係を示さなかった.3)両土壌の分布には地域的な偏りがあった.灌漑水型は西日本に多く(とくに瀬戸内海沿岸),地下湿性型は東日本に多い傾向がみられた.4)上記の分布傾向は灌漑水湿性の灰色化水田土が発達する過程の初期土壌である強グライ土,褐色低地土・斑紋なし,灰色低地土・斑紋なしの分布面積率と逆比例的な関係を持つことがわかった.以上のような結果を得たが,今回利用したデータは次落するものもあり,各県ごとの判別断面数は必ずしも十分とは言えず,今後地力保全事業のような網羅的調査は望み薄ではあるが断面調査結果を散逸することなくデータの補充強化が望まれる.