矯正分野において、金属アレルギーに関して留意すべき点を明らかにすることを目的として、金属アレルギーをもつ矯正患者に対してアンケート調査を行った。調査対象は北海道大学歯学部附属病院歯科矯正専門外来ならびに他の歯科施設の症例で、パッチテストにより原因金属の同定を行い、金属アレルギーと診断された7例(女性6例、男性1例 初診時年齢7歳11ヵ月〜29歳3ヵ月 平均年齢21歳3ヵ月)とした。その結果以下の所見が得られた。1.パッチテストにおける陽性反応を示す金属の頻度ではニッケルが多く、半数を占めていた。矯正分野で使用する金属において、ニッケルは使用頻度が高く、このため金属アレルギー症例の治療の際、材料の選択には注意が必要であると考えられた。2.金属に対する感作の原因としては、ピアスなどによる装飾品によるものが多くみられた。このため、特に矯正分野においては10〜20代の女性が多数受診していることを考えあわせると、問診や観察力が特に重要であると考えられた。3.すべての症例において、何らかの他のアレルギー症状をもっていた。このため、金属に対するアレルギー症状の既往を聞き出すことは勿論、詳細な問診を心がけることは、本人が自覚していない金属アレルギー症例を発見する有効な方法であることが示唆された。