竹中大工道具館研究紀要
Online ISSN : 2436-1453
Print ISSN : 0915-3683
中国の斧と釿
沖本 弘
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1999 年 11 巻 p. 65-95

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抄録
1991~1994年にかけて中国の大工道具調査を上海、杭州、昆明、大理、五台山などで実施した。調査結果から、過去の調査例、文字資料、絵画資料を参考にして、中国のオノについてその形、使い方を整理した。 1) 辞書に表わされた文字から漢代には「釿」はヨコオノ、「鐇」はタテオノであったと推定できる。中国のヨコオノに充てられる文字は、宋代に「釿」から「錛」に変化している。 2) かつてはタテオノ、ヨコオノが共存していたが、現代中国の大工にとって、ヨコオノよりタテオノが主要な道具となりつつある。また、タテオノははつりの機能と鑿を叩く機能をもつ道具として使われる。 3) 中国のタテオノは鉄部のソケット状の非貫通穴や貫通孔に柄を固定する方法であったが、近年は貫通孔に柄を通す方法となっている。 4) タテオノの鉄部は片面刃の形が多く見られた。 5) ヨコオノは雲南省、山西省で見られた。構造は直柄に雇柄をつけて、この先に鉄頭部をソケット穴で固定する形となっている。ヨコオノの柄の長さは雲南省の直柄は短く、山西省の直柄は長いという違いがみられた。 木をはつり、角材、板に整形する道具としてオノは欠かせない道具であった。オノにおいても、機能は同じでも中国と日本と比較して見ると形において多くの相違点がみられた。
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© 1999 公益財団法人竹中大工道具館
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